キャンペーン第五話

 「避けて下さい!」カレリクの声が山沿いの谷間道に響いた。ドドドドドッ!急に地面が裂け、猛烈な勢いで水が噴出してきていた。鉄砲水である。幸いにもカレリクの呼び声が速かったか、フェフラが裾を濡らした程度で済んだ。

 魔道士ガーナックの屋敷への道のりは、思った以上に険しいものだった。一つにはメイリアが通ったことがあるとはいえ、朦朧とした意識の中でのことであり、道が確かでは無かったことがある。そして、もう一つは豪雨である。雨はますます勢いを増し、一行の行く手をさえぎった。もう10フィート前もさだかには見えないほどであった。

 「それにしてもよう降るのう。」ソーリンがつぶやいたその時、前方からゴロ、ゴロゴロと何か転がる音が聞こえた。
 「う、うわ、岩が転がってきてる!ってこれなんてトゥームレイダー!!」レギンの言うとおり、インディ・ジョーンズかララ・クラフトかといわんばかりの大岩が一行に向かってくる。前にも後ろにも逃げ道はない。

 「覚悟を決めるか!でぇい」ソーリンがハンマーでぶったたく。
 「アース・スパイクス!」ヴォルテールの技が決まる。
 「スライ・フーリッシュだよー」レギンの華麗な攻撃だ。
 「我が矢よ!二重にきらめく閃光のごとく大岩を貫け!ツイン・ストライク!」カレリクの矢が飛ぶ。
 「フォース・オーブ!魔法の力でぶっ壊せ!」フェフラの魔法も順調だ。
 「私の思いよ、風に乗る若葉となりて岩を打て!リーフ・オン・ザ・ウィンド!」メイリアの攻撃も決まるが、まだ大岩の勢いは止まらない。
 「ソーリンさん、もう1発お願い!」メイリアが叫ぶ。
 「おうさ!・・・おぉ、ハンマーが軽い!」ソーリンが再度ハンマーを振るうと、見事に大岩は砕け散った。

 「ほっほっほ、上手くいったの」ソーリンの言葉にヴォルテールが続ける。
 「そうだけどさ~、なんだかソーリンさん、鼻の下伸びてなかった~?メイリアちゃん来たからって張り切り過ぎ!」
 「な、なにを言う。おのれ、ヴォルよ、待て、そこになおれ!」
 「へへ~、ソーリンさんの足じゃ追いつかないよ」ソーリンの呼びかけに応えながら、ヴォルテールが軽快に坂を下って行った。

 一行が山を下ると、忽然と目の前に赤レンガの屋敷が姿をあらわした。豪雨のせいでここまで近づくまで見えなかったようだ。屋敷は2階建てで、ひび割れた赤レンガの壁にツタが絡まっているのが見えた。

 「ここですか?」カレリクの目配せにメイリアがうなずく。
 「おっちゃーん、魔法使いのおっちゃーん」レギンがさっさとドアのノッカーをたたき出した。

 ギィ。ぴょこりと扉の隙間から顔をのぞかせたのはどうやら人形のようだった。
 「・・・申し訳ないですが、お引き取り下さい。」とだけ言うと、その人形はサッと扉を閉じてしまう。

 「前に見たことあるけど、あれクレイ・ゴーレムだよ。壺を借りようとした豪邸にもいたな・・・」レギンがぶっそうなことをつぶやきながら、さらにノッカーをたたく。

 「ふぁあい、どちらさまでしょうか?」また人形が顔を出すと、またしめられては大変とフェフラがさっと扉を抑え、ソーリンが足を挟む。
 「うわああ、なんですかぁ!?」人形はびっくりしているようだ。
 「おや?さっきと様子が違うようですね…」カレリクがメイリアにささやくと、メイリアも「・・・不思議ですね」と答えた。

 「ねね、僕たち村長さんに頼まれて魔法使いさんのとこに来たんだ~。入れてよ~」とレギンは特に不思議がることもなく、話をすすめる。
 「はぁい、どうぞどうぞ~」と言うと、人形は今度はあっさり奥に通してくれた。

 通されたのは、どうやら応接室のようだった。明りもともっており、生活感もあるが、普通ではないところが一つ。「水」、である。屋敷の中はじっとりと湿り気を帯びており、足元もじゅくじゅくと水がしみ出してきている有様だった。けして快適とはいえない状況であった。

 「ご主人様わぁ、魔術の実験で忙しいのでぇ、お茶をお持ちしますのでぇ、楽にして待っていてくださぁい」と人形は暖炉に火をともし、部屋の隅でお茶の準備を始めた。

 「ガーナック師はいつもどこで実験されているのですか?」カレリクの問いかけに、人形はふと振り返り、頭を左に傾けて「いつもなら地下室で実験されていますぅ」と答える。
 「あと3日ほど前に村の若者が尋ねてきたと思うのですが」カレリクが続けて聞くと、「はい、こられましたぁ。今は台所にいられますぅ」という。
 
 一行はすわ台所かと立ちあがろうかとするが、人形ののんきな声がそれを制する。
 「あぁ、待って下さい。お茶の準備ができましたぁ」といって体を左に傾けたまま器用にお茶を運んでくる。
 「あの雨の後にありがたいですね。いただきます。」「いただきます~」カレリク、レギンがお茶を口に運ぶ。続いて、他の者もティーカップを口元まで持っていこうとしたその時。
 ガチャン!「おぉ、すまんの。手が滑ってしまった。」見ると、ソーリンの足元に壊れたティーカップが落ちていた。その様子を見て、何かを察したのかメイリアがそっとカップをソーサーに戻した。
 「ソーリンさん、どうしたの?」ヴォルテールがささやくと、「何かがおかしい・・・。飲むのは止めておけ」とソーリンが答えた。それを聞いて、フーフーとお茶を冷ましていたフェフラもあわててカップを置いた。
 「村が危険な状況なんです。早急にお取次ぎ下さい。」飲んでしまったお茶に嫌なものを感じながら、気を取り直してカレリクが尋ねると、
 「は~い、今お呼びしますね~」と人形はやはり体を左に傾けたまま器用に走り去って行った。

 「さて、どうしましょうか?」メイリアが問いかける間もなく、レギンはふらふらと歩きだしていた。どうやら地下室を探しているようだ。「彼を一人にしてはおけません。レギン、待って下さい」メイリアに続いて、フェフラもレギンを追いかけていく。
 「フェフラ、メイリア、レギンを頼みますね!」カレリクは心配そうに見送った。
 「いってしまったな。では今のうちにこちらは台所を調べておこうか」ソーリンが言うと、「台所かあ。食べ物あるかなあ」ヴォルテールがニコニコと答えた。

 二手に分かれた一行のこの先の運命やいかに。
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by geleb | 2011-11-01 11:31 | D&D4e
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