キャンペーン第4話

 「いつまで降るつもりかしら・・・」メイリアは酒場の窓を激しく打つ雨粒を見るとはなしにつぶやいた。

 リンドの村に1軒だけの酒場。メイリアは窓際に一人座っていた。思い返せばここにたどり着いたのも偶然のなせる技に過ぎない。サーイによる襲撃。両親の死。始まった放浪の旅・・・。復讐の思いは募るが、方法もわからずあてどなくさまよう日々。

 「そういえば、彼は無事だといいのだけれど・・・」ホットワインを一口飲み、またメイリアがつぶやく。彼とはそんな放浪の日々の中出会った若きウィザードのことであった。互いに未熟者ではあったが、それゆえの気安さから旅をともにし始めたばかりのこのウィザード、フェフラとは連絡船の難破騒ぎの中ではぐれてしまっていた。

 メイリアもまた遭難者の一人であった。命からがら難破船から逃げ出し、気づくと一人浜辺に倒れていた。豪雨は降り続き、朦朧とした意識の中、ただひたすらに明かりを求めて、やっとの思いでたどり着いたのがこのリンドの村であった。
 
 落ち着いた様子は見せているものの、その美しい黒髪からポタポタとしずくがたれている事からも、メイリアが酒場に着いてさほど時は経っていないことが見て取れた。

 カラカラン・・・。乾いた音をさせて、酒場の扉が開いた。
 
 「亭主殿、エール大ジョッキ5つ!」「それより腹減ったよ~」「やっと、濡れ鼠から開放ですね」
 
 全身ずぶ濡れのにぎやかな一行が転がり込むように酒場に入ってきた。その中には見慣れた顔がいるのがすぐわかった。

 「フェフラさん・・・?」メイリアの問いかけに、フェフラは濡れたフードを脱ぎながら答えた。
 「メイリア!こんなところで出会うなんて!」抱きつかんばかりのフェフラだったが、メイリアは華麗なステップで受け流した。

 「ブハー、生き返るのう」ソーリンはすでに2杯のジョッキを飲み干していた。
 「ソーリンさん、一杯いただくよ」といいながら、ヴォルテールもあっという間にエールを飲み干す。
 「ぬお、それでは足りなくなるではないか!亭主殿、大ジョッキ3つ追加!」

 一行はそれぞれ思い思いの飲み物を飲みながら、話がつきない様子のメイリアとフェフラを遠巻きに眺めていた。

 「レギン、あの娘さん確か同じ船に乗ってませんでしたか?」カレリクの問いかけに
 「ごめ~ん、覚えてない」とどこから持ってきたのかピーナッツをほうばりながら、レギンは答える。
 
 「ねね、お二人知り合い?フェフラ、紹介してよ~」立ち話を続けるフェフラとメイリアを下から覗き込みながら、レギンが聞いた。
 「あ・・・!これは失礼しました。私、ウォーロードのメイリアと言います。皆さんのことは船でお見かけしてましたよ」ぺこりと頭を下げながらメイリアが挨拶した。
 「そうそう、一緒に旅をしていたメイリアだよ。まさかこんなとこで出会えるなんて思わなかったから、びっくりしてたところさ」フェフラも応える。
 「こちらこそよろしくです!ここで会ったのも何かの縁です。一緒にお食事しましょう!」ヴォルテールが持ち前の陽気さで、メイリアとフェフラを一行のテーブルに招き入れた。
 タイミング良く、宿の亭主が料理を運んでくる。船の難破、遭難、野犬との戦闘・・・、腹が減らないわけもなく一行は亭主が料理をおくやいなや、食べ始める。
 「もぐもぐ・・・、それにしてもお姉さん、よく無事でここまでこれたねー、もぐもぐ」レギンが口に一杯にゆでたもも肉をほおばりながら、メイリアに尋ねた。
 「メイリアも浜辺に打ち上げられたんだけど、野犬とかには会わないままここまでこれたんだって」フェフラも食べるのに忙しそうだ。
 
 メイリアだけは食事も済ませたのか、ワインを傾けつつ話す。
 「ええ、フェフラさんのお話を聞いて、驚いていたところなんです。ここにたどりつくのだって、一人で心細かったのに、野犬の群れだなんて・・・みなさんほど、腕が立つわけではないですから」
 「そうだねー、一人じゃこのあたり物騒なのは僕らも一緒だよ。これからどこにいくにしろ、みんな一緒に行こうよ!」ヴォルテールの提案に皆、一様にうなずく。やはり、野犬の群れとの戦闘が応えたようだ。

 「おや?お客さん方、知り合いでいらっしゃったんですかい?それにしてもこの大雨の中、旅を続けてなさるとは物好きですなぁ」宿の亭主の問いかけにカレリクが答えた。
 「物好きと言われても・・・急な嵐で船が転覆して、気がついたら近くの浜辺に打ち上げられてましたし・・・」
 「そうそう、狼にも襲われたしね」レギンが続ける。
 「急な嵐?ハッハッハ、お客さん方夢でも見てるんですかい?この大雨はもう一週間も続いてますぜ。ほんっとに季節はずれもいいとこで困り果ててるとこでさ。」亭主は深刻な面持ちで言った。
 「なんと・・・!してみると、あれはなんだったのか・・・」ソーリンは困惑した表情だ。
 「何か不自然な感じがしますね」カレリクも思案顔で言った。
 「それはそうと、みなさんのような方々にお願いできればありがたいんですがねえ・・・」宿の亭主が思わせぶりな口ぶりで切りだした。
 

 
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# by geleb | 2011-10-27 10:30 | D&D4e